日本文化を覆っている霧について

 

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3年ぶりに歌の作曲をしたCDを発表します。きょうは主に音楽についてブログします。独断と偏見に満ちていますのを承知で読んで下さい。

永らく器楽曲を発表し続けてきましたが、3年前に歌曲CDを発表し、その流れでつづけて歌の作曲に取り組みました。あまり上手くないヴォーカルですが、自分で歌いました。誰か他人さんに歌ってもらう手もありますが、それは時間を喰うので今回も即席発表です。とは言え、なにしろトシで、長いフレーズはなかなか息が続きません。イイ歌い方はないかと思案していて、アイ・ジョージを思い出しました。私が高校生の頃アイ・ジョージがテレビで「ラ・マラゲーニア」を歌い、「マラゲーーーーーーーーーーーニア」とよくあれだけ息が続くなと、その声の出し方に感心した記憶がよみがえりました。便利な世の中です。当時のLP盤塩化ビニールに記録された音楽が、復刻版CDとして発売されています。早速Amazonで発注、「ベスト版」が翌日に届きました。いきなり6曲目の「ラ・マラゲーニア」をかけずに、まず1曲目の「硝子のジョニー」から聴きました。・・・・・ウーン「上手い!」。「歌が上手い!」。上手い歌はいろいろありますが、尾崎紀世彦的に上手い。しかも尾崎紀世彦よりも上手い。声楽の訓練を受けたかのような太い声。長く伸ばす部分の心地よいヴィブラート。逸品です。12曲すべて聴き終えて感動しました。

話が少し横道にそれますが「ヴィブラート」について一言。ヴィブラートはヴァイオリンやチェロの近現代演奏には必須のものです。同じ音を伸ばすとき、弦を押さえた指を上下させて音を揺らします。フルートなど木管楽器でも息をコントロールして行います。ヴォーカルでも同じですが、プロでも誤解している歌手が多々います。演歌歌手に多く、音程を幅広く上下させるのがヴィブラートだと誤解し、半音の半分ぐらいの音程差で上下させます。こうなるとこれはもう聴いていて気持ち悪くて仕方がありません。ヴィブラートはわずかの音程差とマンドリンの演奏のように、音圧の大小の震えをミックスしたものです。音程をあまり幅広く上下させると、外れていると感じるし、半音まで上下させると「トリル」になってしまいます。一時、ある童謡歌手もひどかったのですが、誰かの忠告を受け入れたのか、最近はマシになりました。いま思いつく素晴らしいヴィブラート歌手は、カレン・カーペンター、アンディー・ウイリアムス、コニー・フランシスといったところです。コニー・フランシスの「渚のデート」を日本語で歌った伊東ゆかりも上手い。美空ひばりも上手い。そしてアイ・ジョージ

少し横道にそれてしまいましたが、このひとアイ・ジョージ音楽学校で声楽の訓練でも受けたんだろうか、と調べてみると違う。混血児ですが、小学生までは裕福な環境で育っていたようです。太平洋戦争で父親が出征し境遇は一変、孤児になってしまいました。職業を転々、ボクサーも競輪選手も経験し「流しの歌手」に。一旦はテイチクからレコード歌手デビューをはたすも、続かず再度流しの歌手をしていた26歳、運良く大阪キタのナイト・クラブ「アロー」の専属歌手となってから売れ出しました。翌年から1971年までNHK紅白歌合戦に12回連続出場します。私がテレビで見ていたのはこの頃です。ここまでアイ・ジョージのことを書いたのは、実は現在の日本文化の現状と比較するためです。いま売れている歌ってどうでしょう。ラジオを点けていると、次から次へと歌が流れます。すべてほぼ同じ感じの曲、印象に残りません。やたらと乗りのいいリズム、それだけ・・・。歌詞も旋律も歌声もほぼ同じ。48(フォーティ・エイト)とか言ってテレビではダンスは上手いが、歌はお添えもの。特に日本人なのに、外人が日本語を話す時の話し方をまねた歌い方。あれは神経が壊れそうになります。ライブ・コンサートでは大音響と光と煙が交錯し音楽はどこへやら。音楽以外では、お笑い番組、タレントが受けようと言葉を発し続け、録音された笑い声が画面に流れるものの、ちっとも面白くない。先日亡くなった、柳家小三治の話術「クスッ」と吹き出すような味がないのです。美術の世界、映画の世界、広告の世界。音楽では最近のクラシック音楽の世界。どうにかしているヨ「日本文化」・・・・いや「世界の文化」も。いったいコレ何やってるの→つまり霧に覆われて本物が見当たらない。アイ・ジョージの歌を聴いて、久しぶりに音楽に浸った感触がよみがえりました。岸洋子という上手い歌手もいました。山田姉妹という素敵なデュエットもいますが、オリジナルの持ち歌がイマイチ面白くありません。曲の制作にもっと力を入れればいいのに。妹が妊娠したということで、それも心配です。他方、アイ・ジョージ坂本スミ子のバックで演奏していたナイト・クラブ「アロー」のバンドマンの皆さん、いまも「アロー・ジャズ・オーケストラ」として目立たないけれど活動しています。タイム・ファイブを聴きにいって、バックのアロー・オーケストラに感動しました。そのように、きっと歌の上手い歌手もどこかで、ひっそりと歌っているにちがいありません。嘆かわしい現状です。

私の歌はもうひとつだけれど、これからも歌詞、曲、編曲に精進しながら楽しんで活動していきます。いつの日にか、日本を覆っているこの変な霧が晴れるのを待ちながら。しかし、あきれたこの状態、長くつづいていますネ。