人口減少はそんなに悪いことですか

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米国・ワシントン大の研究論文では「世界の人口は2064年の97億人をピークに減少に向かう」と予測。それ以後は予想以上の少子化が進むということで、世論は「さァ大変だ」となります。しかし、人口減少、少子化って、そんなに悪いことですか ?  私はむしろ、人口増加の方には「食糧危機」「超過密都市」「病疫の蔓延」などマイナスのイメージを強く持っています。特に発展途上国では「食糧不足」「乳幼児の飢餓、死亡」「資源や水の奪い合い、内戦」など、人口爆発によってもたらさられる悲劇があとを断ちません。人口が減少に向かって「大変だ大変だ」と困るのは誰か ? まず労働集約産業の経営者。次に役人と政治家。そして大量消費を経営の前提としている産業従事者( 広告、報道、出版なども含めて )。これら困る人々に共通する最大公約数は、人間を牛や羊など家畜並みに捕らえている点です。個々の個性や特殊性は関係ない。とにかくアタマ数が問題なのです。労働集約産業とは、人海戦術、多くの人間を奴隷、家畜のように使って、何かを作り出したり、売ったりする。個々の労働者の技能・知能は問わない。とにかく人手、アタマ数だから足りなければ、外国人労働者、移民で代替えを図る。単純労働を研修実習生などと偽って働かせるセコい方法を採る。インチキそのものです。

私は若い頃、石油ショックを経験しています。あの時得た教訓は2つ。「日本産業界のモーレツな省エネ努力」に驚きました。各企業が秘めていたポテンシャルの凄さに目を見はりました。1970年頃、「このまま石油消費が増え続ければ、10km間隔で中東から日本まで原油タンカーを連ねなければならない」と聞かされていました。中東戦争をきっかけに、1973年産油国は石油価格を70%値上げし、潤沢な石油輸入は不可能になりました。背に腹は代えられない。腹を背に代えられない。産業界はこぞって省エネルギーに取り組み、10年間ほどで以前使用していた石油の3割減、4割減で生産、生活が可能になりました。ガソリン1リッターで5kmしか走れなかった自動車を、1リッターで10kmも走れるように作りかえました。もうひとつは、あの時堺屋太一氏が話した言葉「どれだけ採掘しても、石油は枯渇しない」でした。石油は採掘しすぎて埋蔵量が減ってくると、採掘生産量は減ります。少ない石油の価格は上がります。すると上昇した価格の石油を買えるひと(会社)は減ります。つまり供給がどんどん減ると、需要(使用量)もどんどん減って、枯渇するまで採掘しつづけられなくなるとの論法でした。

あのとき学んだ教訓で考えれば、人口爆発→食糧不足→飢餓→栄養失調→大量死の図式は大量飢餓死→産児制限→人口と食糧が均衡する の法則が当てはまるかも知れません。もちろん大量飢餓死という悲劇がまっていますが、子供を産んでも食糧がなければ生きられないとなっては、産児制限の力が働くことは確かです。人口減少は怖くない。人口爆発が怖いと考えるのは、大量飢餓死という悲劇に突入するのが怖いのです。30万年の人類史のなかで、一貫して微増してきた人口ですが、英国の人口は産業革命以後100年で4倍に爆発増加したという数字があります。産業革命で移動、運搬、生産など人間の労働量が減った分、不必要になった人口は減ったのではなく、増えました。食糧が増え、楽ができてひとは増えました。この増加トレンドは人類にとって危惧材料です。しかし先進国においては、高学歴化、女性の社会進出などの要因で、出生率が下がり21世紀中に多くの国で人口が減るらしいのです。労働量は減って、人口も減る。喜ばしいことではないですか。発展途上国ではまだまだ人口が増え、食糧や豊かさを求めて国境を越える移民問題が大きな問題になってきました。先進国は移民を「ひとのやりたがらない労働」に置き換えようとはせず、発展途上国の人口増加を抑制する手立てを考える時期にきています。食い過ぎによって脂肪、血糖値、体重が増え、用もないのに血相変えてランニングして、体重を減らそうとしている人々を見ていると、先進国ではまだまだ食料、労働力(人口)が余っているのだと感じています。

A malnourished child in an MSF treatment tent in Dolo Ado.jpg

 

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