広報後進国ニツポン

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立ち話しがはずみます

 

戦国時代の映画やテレビ・ドラマのシーン。斥候か伝令の若武者が早馬を飛ばしてくる。戦陣に到着、馬から飛び降りると武将に対して「申し上げます。ただいま敵は○○川を渡りました。3万の軍勢が△△城に向かっております」などと息せき切って報告する。このとき若武者は武将に対して、かならず膝をついて申し述べるのです。けっしてツッ立ったまま言うことはありません。私が生まれ育った所は、京都の花街、祇園の近くです。若い舞妓見習が田舎から出てきた当初、座敷で、お茶屋の女将や先輩芸妓に立ったまま話をすると、「ちょっとアンタ、立ってモノ言うのやめヨシ!」ときびしく叱られます。襖の開け閉てはもちろん、必ず畳に両膝をついて話すのが、祇園に限らず京都では当然の行儀作法です。日本の総理大臣も東京都知事も、国民、都民に立ったまま話をします。新型コロナ蔓延下、毎日のように首相も都知事もテレビ画面に出てきます。それは首相官邸や都庁の廊下(ロビー)に記者やカメラマンがじっと待機していて、相手が出てくると質問を投げかける段取りになっています。前もってそこにマイクが設置されている場合もあります。質問に適当に応え(詳しく説明することはありません)、ひとつかふたつ出た質問に手短に答えると、サッとどこかへ行ってしまいます。逃げ腰なのです。この国の政治は、まともに国民と向き合う気があるのかと疑問に思います。新型コロナに関する会見、ニューヨーク州クオモ知事は広いテーブルに資料を並べ、椅子に座ってニューヨーク州の現状を、毎日詳しく説明していたそうです。データを開示し、あとは記者の質問がなくなるまで応じていたと伝えられます。台湾でもコロナ蔓延を抑えた衛生福利部長・陳時中は毎日会見を開き詳しく説明。記者の質問がなくなるまで応じ、台湾のひとびとは現状が良く理解できたと納得し、彼の人気は高いと伝えられています。

日本の政治家にこの姿勢がないのはなぜか。ひとつはトップが現状を全体的に把握できていない。各部署に任せっきりで総合的に問題を把握できていません。だから記者から数々の質問がでると、答えに窮するのがわかっているので逃げ腰になります。もうひとつは、旧弊からくるもの。政治家派閥の領袖が力をもってしのぎを削っていたころ、記者は番記者として領袖にくっつき、そこから特別に情報を得ていました。まともな国民向け会見のないこの国では、そうしないと重要情報が得られない。政治家のほうも、世論操作や派閥運営の裏ワザとして、本情報、ニセ情報を番記者を利用してリークしたりしていました。内閣官房長官の毎日の定期会見はあるのですが、すでに実情報が行き渡ったあとの発表で、セレモニーのような感じがします。会見に、官房長官は大きな冊子をかかえて登場しますが、そのなかのデータなどを見ながら数字あげて具体的に説明しているのを見たことがない。しかもツッ立ってやってる。質問を希望して挙手をする記者を、傲慢にも手のひらを立てて恣意的に選びます。記者を選ぶと言うことは、すべての質問には答えないということ。質問のある記者は、着席順に質問できて最後のひとりまで答えるのが内閣の広報担当大臣ではないですか。国会の答弁もしかり。前日ぐらいに前もって提出された質問に対して、委員長が挙手した答弁者を指名し、閣僚席もしくは官僚席から答弁者がノコノコと答弁席に歩いてくる。答弁がズレていようが、食い違っていようが、的を得ていようが、言いっ放しですぐに元の席へ戻ってゆく。この不毛な繰り返し。これやめたほうがいい。民主主義の本家、イギリス議会の映像を見ますと、質問者も答弁者もテーブルをはさんで椅子に座って、普通に話しするように審議、質問答弁しています。これをやるには問題に対する知識、見識が必要です。ごまかしたりすれば、すくにバレてしまい、見ている国民は (ア!このひとダメだ) とか (このひと良く勉強しているナ) とか感じて、議員としての資質がマルわかりになります。日本の議会もこの方式に変えましょう。それに、首相や都知事の廊下立ち話、逃げ腰方式をやめて、椅子に座って現状や自らの意見を知ってもらうよう努力をし、しっかりやるべきです。国民、都民を自分より目上の存在と思う意識があれば、立って話すのは失礼なのであり得ない。国民、都民は納税者、選挙民なのですから。みなさん声を大にして言いましょう。「ちょっとアンタ、立ってモノ言うのやめヨシ!」と。やんごとなきお方が、「引退したい。次の代へ譲りたい」とテレビで国民に向かって述べられた会見でも、ちゃんと椅子に座って話されていたではないですか。たかが首相や都知事が立ってモノ言うなんて、馬鹿にしています。皆さんそう思いませんか。

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