菅直人議員の再評価

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写真は東京電力ホールデングスより

 

東日本大震災から10年目となる311日、当時総理大臣だった菅直人氏がBS8チャンネル、プライムニュースに出演しました。東京電力福島第1原発の事故対応に関して、司会キャスターが繰り返し執拗に「総理大臣が、現場へ出かけていって、混乱を招いたのではないか。現場へはしかるべく対応にあたる人間を派遣して、司令塔たる首相は東京から指示を出して対応すべきではなかったか、という批判にどう応えるか」と強くただしました。菅氏は「事故は東電の責任であり、住民が被害を受けることへの対応は、政府の責任」としたうえで、「東電のトツプは東京におらず、事故の現状説明を東電担当者に聞いても、原子力保安組織に聞いても『わからない』としか返事が返ってこなかった。現場へ行くしか事故の内容がつかめないじゃないですか」とたんたんと応えました。司会者がさらに「現場へ派遣する適任の人がいなかったのか」と問うと、「当時私はすでに65歳。若い人を放射線の強い現場へ送るよりも、自分が行こうと思った」と応えました。

経営者をつづけてきた私の乏しい経験から言えることは、のるかそるかの危機にさいして大切なことは、トップにある立場の人が、現場に立つということです。平時にはそれぞれ役目を担当している人が、対応すれば良いのですが、有事にそれが上手く機能するかどうかわかりません。有事には能力の有無が顕在化します。担当者を信じて任せてみては、大失敗することの方が多いものです。内閣府原子力安全委員会委員長は同行したヘリコプターのなかで「総理、原発は大丈夫なんです。(原子炉は)構造上爆発しません」と述べたけれども、水素爆発、「アー」とため息ついたとか。電力会社の役員なんてエリートはサラリーマン貴族。事故が起これば病院へ入院するか、雲隠れ。東電の原子力保安担当員は、理科系の知識がないエリートで「わからない」の連発だったそうです。原子炉緊急冷却のため、海水を注入すれば再臨界を誘発して危険だと、東電本社は現場へ海水注入中止を命じたけれど、現場の吉田昌郎所長は面従腹背、本社につながったテレビ・モニターで「注入中止」を声高に叫びながら、部下にこっそり注入を続けさせました。これも現場の判断です。菅氏は「私が海水注入中止の命令を出したと誤報された」ともその番組で語っていました。インパール作戦ガダルカナル島など、作戦の立案張本人が現場に行かず、離れた場所から命令を出しつづけた失敗は太平洋戦争で山積みされています。機密が解読されて現場に向かう途中、撃墜されて死んだ山本五十六も現場で指揮する大切さを知っていて、戦地へむかっていました。もしも、あの事故当時菅氏のあとに就任した総理大臣の面々の誰かが対処していたら、「事故はオレの責任じゃないよ」と多分現場へ行かず、状況を理解できず被害は拡大、日本の北半分は人が住めない状態になっていたかも知れません。菅氏は「住民避難の際、バスで移動させた老人たちの数人が病死したこと」を悔やんでいました。「震災後10年が経ち、少しづつ当時の真実が現れてきて、私への風当たりも和らいできました」とも語っています。自分の決断、行為が評価どころか非難されつづけ、口惜しい想いで生きてきた10年だったようです。当日の番組を見ていて、このひと、事故の最悪結果を予測して、なりふり構わず「良くやった」のではないかと思えてきました。もうひとり「良くやった」吉田昌郎原発所長は、私が罹患した同じ癌で事故から2年数ヶ月後に死去されました。私が癌から助かった放射線治療の経緯は2日前のブロクで書いた通りですが、吉田氏は仕事柄、放射線治療をどう考えていたのか、わかりません。手術は受けたと報道されています。

いまはコロナ禍の有事、相変わらず永田町も霞ヶ関も、平時の対応で目詰まりを起こしています。ワクチン接種にだけ頼らず、ブラック・ボックスながら効果が報告されている、すでに薬事承認されている寄生虫薬・イベルメクチン(800-1回限り)を治験をどうこう言わずに国民に投与すれば、それが有事の対応、やってみる価値はあると思っています。

( 追記 )これは菅直人議員を見直したブロクです。政治的な意図はありません。ただ彼が所属する政党の評価が、いっこうに上がらないのは、立法・政策能力が劣っているからではありません。いまはむしろ、与野党知恵を出し合って、コロナ禍で困っているひとや、組織への政策すり寄せが進展しています。少し新しい民主主義のステージに入ったような気もします。野党に国民がウンザリしているのは、議会で議員や官僚をヤリ玉にあげて攻撃する、国政調査権の乱用です。立法・政策を二の次にして、プロ・レスリングさながら、特定のひとを殴打、連打し喝采を浴びて選挙を有利にしようとする魂胆が醜いのです。ルール違反や犯罪は、警察と検察に任せるべき事柄です。日本社会党という政党が、ヤリ玉追求に特化ばかりして、しだいに国民からそっぽを向かれ、凋落していったのもそれが原因です。正義の味方ぶるのは忘れられない、美味しい味なんでしょうネ。