競馬ロマン-その2 ( 競馬とカネと )

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スピードシンボリ(Wikipediaの写真から)

 

前回につづき競馬についてブログします。日本の競馬は、神社境内で流鏑馬のように、直線をせいぜい2頭が競争するものだったそうです。楕円型のトラックを走る形式を持ち込んだのは、明治以後、西欧人だったとされています。以後どの馬が速いのか、カネを賭ける歴史ですが、博打容認派と不謹慎派のあいだを振り子が揺れます。結局、カネを賭けない開催をすると、さびれを招きまた賭けて開催を繰り返します。野球やサッカーは、敵味方に別れて応援を楽しむもの、相撲やボクシングは1対1の力と技のぶつかり合い。それらはよほどの博打好きはべつにしてカネを賭けなくても楽しめます。しかし、麻雀やルーレットはカネを賭けずにやっても面白くありません。賭け麻雀が発覚して職を失した検察官がいましたが、カネ賭けずに麻雀するひとっているんですか。競馬も同じ、そこには「運」がかなり作用します。競馬は馬が走るのです。騎手がまたがって操作しますが、騎手の力量だけでは限界があります。逆に騎手が下手をして負けることもあります。競馬も多く「運」の要素に左右され、楽しむものです。

歳相応に仕事と家庭の責任も増し、競馬にうつつをぬかしているわけにはいかなくなりました。以後ずっと競馬のことは頭から抜けていました。ある日、もっていたクレジット・カードの会社からDMがとどき、それは共有馬主の勧誘でした。1頭の競馬馬をグループで共有するシステムです。競走馬を個人で持つほど資金力はもちろんありません。出資比率に応じて、馬の購入費用、預託料 ( 飼料代、飼育・調教費用等 )を負担し、もしもその馬が賞金を稼げば出資比率に応じて配当金を分配するというものです。よせば良いのに、物好きにも参加しました。出資した額は馬の一部分、20分の1、ヒヅメひとつ分ぐらいだったでしようか。購入料を支払い、毎月定額の預託料が口座から引き落とされ、やがて2歳になった若駒はレースに登場します。馬の名前は忘れました。ヒヅメ分ほど所有していたので「ヒヅメ馬」としましょう。大手放送局では放送されないレースを見るためにグリーン・チャンネルを契約しました。最初のレース、ヒヅメ馬は、スタートから最後尾を走り、第4コーナーをまわって、さあこれから追い込むゾと思いきや、どんどん離されて行く。着差は「大差」。1着馬からではありません。10数頭の最後尾よりひとつまえの馬からの「大差」です。有力馬が最後尾を走っていると、レース後半に追い上げてくるのを知っているので、アナウンサーは「○○は後方待機です」と言います。ヒヅメ馬は画面から外れて、そのままです。ダメなのがわかるのでしょう「後方待機」などとは決して言いません。黙殺です。テレビカメラは4コーナーを回るとき、走ってくる馬群全体を映します。カメラ・アングルのおかげで、どんなに遅れていても、画面に入ります。ここで馬群の直後にいれば、望みはあるのですが、ここでも離れたままです。そのままどんどん引き離されてゆきました。ヒヅメ馬は数週間の出走停止を喰らいました。出走停止処分の条件に「調教が十分でないとき」があり、該当したようです。停止解除後、第2戦、同じく最後尾「大差」。ヒヅメ馬はいつしか放牧に出されました。帰ってきませんでした。どこかの乗馬クラブに売却され、引退です。懲りずに、翌年次の馬、また次の馬と、このヒヅメ馬主を3頭ほど経験しましたが、結果はほぼ同じでした。2頭目3頭目の、最後尾を走るヒヅメ馬を見ていると、馬が走りながら含み笑いをこらえているように見えるのです。馬は笑いません。しかし、そう見えて仕方ありませんでした。( ウフフフフ。何でそんなに必死に走らなアカンのヤ。別に格別旨いもン喰わせてもらえるわけでもないのに。走らんでも喰わせてもらえるデ。馬群に加わるのは危険ヤ。落馬、転倒があっても、離れて最後尾にいれば回避できるデ。あいつ等あほヤ。フフフフ・・・・ )。離れた最後尾になると、騎手もムチを打って走らせようとはせず、あきらめています。ムチは競り合った時に使うものです。これはまさしく人間社会を見ているようでした。あなたの職場にもこんなひといませんか。しんどい仕事から逃げまくって、休暇や待遇はしっかり要求する。それを恥とも何とも思っていない・・・。毎年、若駒の発売時期になると、血統などがくわしく記載された写真つきのパンフレツトが送られてきます。4年目ぐらいに馬鹿馬鹿しくなってやめました。ところがちょうどその年、やめて捨て去ったパンフレットのなかに、のちに皐月賞2着、ダービー3着、菊花賞2着と活躍した若駒がいたのです。惜しくもGⅠ馬とはなりませんでしたが、GⅢ、GⅡは勝っています。トータル獲得賞金は4億6千万円となっています。毎年そのパンフレットには10頭ほどの1歳馬が載っていましたので、うまくその馬のヒヅメを買えていたか疑問ですが、口惜しい思い出です。競馬とはこんなもんです。タラレバは通用しません。もしももう1回買っていタラ。第4コーナーで内側があいていレバ・・・・・。競馬でタラレバは禁句です。

地方競馬から中央競馬へ躍進し、頂点を極めたハイセイコーオグリキャップの大活躍は多くの競馬ファンのみならず、一般のひとびとに夢と感動を与えたにちがいありません。しかし、私は競馬から離れていて観ていません。スピードシンボリだけが感動の思い出です。以後、わずかですが、私の競馬とのかかわりは、不純にもカネの思い出だけになります。失敗した思い出がほとんどです。