炭を 「 いこす 」 は方言でしょうか

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これは火消し壺。京都では(関西ではかな?)、炭に火の点いた状態にすることを「いこす」と言います。炎をあげて燃える火は「おこす」ですが、炭は「いこす」、また茶室の炉や囲炉裏の火は「いこす」です。「炭いこしときヤ」「炉の火いこったか」「よういこってますワ」などなど。昔はライターなんて便利なものはなくて、火は火打ち石(昔は「燧石」)と金属とを打ち合せて火花を飛び散らせるか、堅い木と木をこすって、火口(ほぐち)とよばれる着火しやすいものに点火して、次に藁や細かい木片に火を移す。という面倒な作業が必要でした。竈(かまど)や囲炉裏の火は、翌朝まで消えてしまわないようにもたせるのが、賢い主婦。着火している炭や薪に灰をかぶせることを「おぼむ」といい、「炭おぼんどきヤ」「火おぼんどいて」などと言います。これも方言かも。運悪く朝に火が絶えてしまっていれば、「済ンません。火だね貸してもらえますやろか」なんてバツの悪い顔で、隣近所へ火だねをもらいに行ったものです。いまは都市ガスやプロパンガスのレンジをカチンとひねれば、簡単に火が点きます。

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炭をガスなどで「いこす」のにつかう、取っ手のついた器具を、これは関西でも「火おこし」といいます。「火いこし」と言わないことを考えると、やっぱり「いこす」は関西の特殊な方言でしょうか。茶道教室では、茶室の炉に炭を組んで、火だねで炭に火を点けるとき、「夏下冬上」(かかとうじょう)。夏は火だねを炭の下へ、冬は火だねを炭の上に乗せれば点きやすいと教わります。便利さと引き替えに、先人の知恵を失っていってるように思います。